白い墓

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俺は四国の愛媛県の田舎町で生まれ育ち、平穏に暮らせていた。 しかし小学三年生のときに母親がクモ膜下出血で急死して、日々が 一変してしまった。 俺と親父の2人きりの生活は、なんだか窮屈なものになったからだ。 仕事が忙しく、家にあまり居なかった父の存在は、俺にとっては妙に よそよそしい相手でもあった。 父と一緒にいるのが気まずくて、俺は外で遊ぶようになった。 ロクに友達もつくれないから、ひとりきりで。 その日も土曜日の午後から、ひとりで山奥にはいって散歩をしていた。 秋になり、木々の紅葉の彩りが増していくなかで、俺は下ばかりを見て どんぐりを拾うことに専念していた。 すると......落ち葉に満ちた山道の端のほうに、銀色に光るものを みつけた。 それは遠足などで使う弁当箱ほどの大きさの意味不明な何かだった。 手にして躊躇なく持ち上げ、あちこち眺めて、わけがわからず、また 地面に置いた。 そしたら銀色のそれが、ウィーン......と、かすかな音を立てて開いた! さすがに驚いたし、怖くなって後ずさりしたが、好奇心で見てみた。 よくわからない仕組みで開いたその中は、よくわからない機械で......。 そして、小さな生き物が横たわっていた。 これは宇宙人だ!と、映画や漫画の影響をうけたまま、俺は認識した。 全身が黄色で、頭、胴体、手足があり、動物や虫にはみえなかったからだ。 体毛は無く、性器も見当たらず、けれども人に似た目と鼻と口があって、 苦しそうに息を吐いている。 やがて呼吸らしきものが次第に薄くなり......パタリと動かなくなった。 何かが伝わってきた気がした。 死んでしまったのだという、生命の途切れた感覚が......。 銀色の箱が再び唸り、閉じられた。 俺は悲しいとか恐ろしいとかではなく、咄嗟におもった。 お墓をつくってあげなければ......と。 死者は丁重に弔うものだ。 母が死んだときに、俺はそれを学んでいた。 人の所有地ではなく、掘り返される心配もなく、ひっそりとした場所を 探して、どうにか日が暮れる前に見つけることができた。 そこへ銀色の箱を埋めた。
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