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ところが寝室はもぬけの殻。一体水鳥川氏はいずこにと皆が辺りを見回すと、「あっ! あそこに倒れているぞ!」と警部が指さした1階のホールに人影が。
階段を駆け下りた人々は濃くなっていく血の匂いに思わず鼻を覆いました。
そこかしこに血の飛び散った床。その中心に倒れている水鳥川氏の頭は血で真っ赤に染まり、打ち捨てられたノコギリも血塗れという凄惨な光景が広がっていたのです。
夫人は気を失い、倒れそうになったところを木戸探偵が受け止め、使用人達に委ねました。
「これは……なんということだ……!」
「そんな……さっきまで呑気な顔をしたラッコが出てくるような素っ頓狂な展開だったのに、こんな状況で本当に殺人が起こっても温度差がありすぎてついていけませんよ……」
田中少年も呆然としています。
「しかし起こってしまったものは推理して解決するのが私達の役目だ。そうは思わないかい、田中君」
「そう、ですね……」
気を取り直した田中少年は、あることに気が付きました。
「おかしいですよ先生。水鳥川氏が殺された時、僕等は全員同じ場所に集まっていたというのに、誰が水鳥川氏を殺したというんです?」
「そう、それこそが今回の事件の問題なんだ」
そう云って木戸探偵はその端正な顔を読者の皆様の方へ向け、今これを読んでいる貴方に語りかけたのです。
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