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永遠のループ…。
そして夜になった。
俺は経営者の顔で彼女の両親と会い、会社の都合で結婚できなくなったと伝えようとした。
だがそれを切り出す前に、來美が言った。
「トオル君、助けてほしいの。新築した家が空き巣に入られちゃった。総額五千万盗られた。本当に申し訳ないんだけど、また助けて。現金もダイヤも盗まれた」
新築した家⋯⋯?
どこにそんな金があったんだ。おまえの家は俺にやられて困ってたんじゃないのか。
そんなことより、また俺はこいつの家を空き巣したのか?!
なんて運が悪い。運が悪すぎる。だが、俺にはもうこいつを助けるつもりはない。
「それは、災難だったね。だけど、俺には会社の都合があって、結婚はできなくなった⋯⋯」
と言うと、來美は被せ気味に言った。
「悪いことを生業にしてる人が、みんな言うことなんだけど」
來美は悪魔の笑みを浮かべる。
「お金に色はないんだよ。だから、どういう経路でそれが戻ってきても、お金はお金でしかないの」
その瞬間、俺は來美の本性を知った。
こいつはすべてお見通しだ。
俺の稼業はとっくにバレていて、警察に言うも言わないも來美のご機嫌次第。
だから捕まるその日まで、あと一回、あと一回、と自分を言い聞かせて空き巣し続けるしかない。
悪魔の女⋯⋯。
來美の家から盗った時点で俺の永遠ループは確定していたのだ。
あと一回、もう一回、あと一回の盗みは今後もずっと終わらない。
強要された窃盗でも、來美は強要の証拠を残さない。
あくまで直感だが、來美はそんなドジを踏む女ではない。
しかし、観念して捕まりたくもない。警察が調べれば俺の余罪は暴かれてしまう。
チェックメイトだ。
俺の人生、ここに詰んだ⋯⋯。
〜END〜
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