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仕事を早めに切り上げて帰る準備を整えていると、通りがかったルーナが、驚いたように眉を上げた。
「あれ、リリアナ早いね。珍しい」
「うん、今日は友達とマルテ食堂に食べに行くんだ。友達に話したら、行ってみたいって言うから」
「え、マルテ食堂に?」
ルーナが慄いたようにのけぞる。そして、不安そうに眉を寄せながら口を開いた。
「リリアナ、あのお店は、連れて行く人を選ぶと思うけど、大丈夫……?」
マルテ食堂は、大盛りメニューが有名な店で、食べることが大好きなリリアナの、お気に入りの店だ。そういえば以前、ルーナを連れて行こうとしたら、こんな量は食べきれないから無理! と、店の前で全力で拒否されたことを思い出す。
「あぁ、友達って男だから大丈夫。成長期の男子はよく食べるよー。あたしと同じくらい食べるもん」
ルーナを安心させようとそう言ったら、逆に目を輝かせて詰め寄られた。
「え、ちょっと待って。友達って男の子なの? っていうか、彼氏?」
「や、彼氏じゃないってば。普通に友達!」
リリアナは慌てて、訂正する。ルーナは意味深な笑みを浮かべ、その生温かい表情にリリアナは思わず唇を尖らせる。
「本当、違うからね! 単なる男友達!」
「分かった、分かった」
笑いながらも、それ以上追求する気はないようで、少しだけホッとする。本当に、ただの友達なのだから。
「じゃ、楽しんできてね。でも、夜だし、帰りはあんまり遅くなったらダメだよ? もし引き止められたら、門限があるからって言って帰ってくるんだよ?」
「ルーナ、お母さんみたい。大丈夫だよ」
心配性なルーナの言葉を笑い飛ばし、リリアナは手を振って別れた。
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