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そう呟いた瞬間、扉が静かにノックされる音がした。扉を開けると、そこには北条宗介が立っていた。いつもの無愛想な顔。でもその奥に隠れている優しさを、私は知っている。これほど辛い思いをさせられたのに、この顔を見ると胸が熱くなる。
「らら、準備はできているか?」
彼は真剣な表情でそう言った。私は小さくうなずき、彼を部屋の中に招き入れた。宗介の計画が頭の中にあるものの、まだ心の中には疑念が残っていた。彼が過去に戻る理由、それが私にはどうしても腑に落ちないのだ。
「どうして……何度もやり直すの?」
私はその疑問を再び彼に投げかけた。これまでにも何度か同じ質問をしたが、彼はいつも曖昧な答えを返すだけだった。
「このままじゃ終われないからだ」彼の声には、揺るぎない決意が滲んでいる。「如月彩が不正で勝ったことを、俺は許せないんだ。だから、今度こそ止める」
彼の言葉を聞きながらも、私の胸の中に疑念が消え去ることはなかった。やはり、宗介は如月彩との関係を取り戻したいのではないか。彼が何度も過去に戻ってきた理由が、私のためではなく、彩のためなのだと。
「……わかったわ。でも、気をつけて」
私は彼の真意を確かめるために、言葉を選びながら答えた。
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