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山の会を結成した。山登りをするわけでも山について調べるわけでもない。ただ名前に山の字が入っている連中がその場にたまたま集まっていたから、冗談で言っただけだった。
俺は山本だ。メンバーは他に田山に山川、木山に亀山と被ることもなく色々と揃っている。
職場の喫煙室でそんな話になったのだが、気も合う連中だったから飲みに行こうということになった。
その翌日、喫煙室で顔を合わせた部下の丸山が声をかけてきた。
「私も入れていただけませんか?」
「なんのことだ?」
「その……山の会に」
ああ! こいつも山が入っている。どこで聞きつけたのかわからんが、まあいいだろう。俺は快諾した。
それから日に日に声をかけられるようになった。神山に山田、檜山に山下と、よくもまあこんなに山の字のつく人間がいたものかと感心した。どこかで噂にでもなっているのか、今まで話したことのないやつにも請われるようになった。
終いにはこんなやつらも現れた。
「岩田というのですが……」
「岸辺にも山の字が入ってるだろ?」
「谷岡だ。岡の字に山が入ってる!」
さらにはこうだ。
「名前が崇です。一応山の字が……」
「両太郎と申します。両のところに山がありますよね?」
みなどうしてそんなに山の会に入りたいのか。
その週末の山の会は、つまりはただの飲み会だが、膨れ上がって35人ものメンバーが集まった。
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