山小屋にて

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「勝負って、なにするの?」 男が後ろに手を回し、サイコロと湯呑茶碗を出してきた。 「偶数か奇数か、出る目を当て合う」 「わかった」 僕は改めて座り直した。 男のほうは、ゆったりした姿勢であぐらをかいている。 「よし始めるぞ、なにか頼みたいことはあるか?」 「サイコロを高く上げてほしい」 「よしわかった」 男がサイコロを上と放り投げ、見事な手つきで 湯呑み茶碗の中へと入れた。 「さあどっちだ?偶数か奇数か」 「偶数」 僕は即答した。 「えらく自信があるんだな、しかし俺も偶数に掛ける」 「それじゃ勝負にならない」 「しかし俺の勘は鋭い、偶数だ」 「動体視力」 「え?」 「サイコロが落ちて茶碗に入る瞬間までみてた。2になった」 男が湯呑茶碗を掴んで持ち上げた。 サイコロは2の目が出ていた。
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