山小屋にて

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「博也......?」 三角の小屋まで祖父がきた。 鬼の男も立っている。 「おじいちゃん、僕、鬼に勝ったよ」 「まさか、どうやって?」 祖父は伝記を読んでいなかったので、勝負が何かは知らなかった。 「簡単な勝負だったよ。それより、おじいちゃん。 もうおじいちゃんは死んでるんだよ。あの世へいこう」 「わしが?何を言うとる、ご馳走つくって待っておるよ」 「食べたことある。カモ肉、山菜たっぷりのごはん、焼き魚、 どれもおいしかったよ」 「今年も食わしてやる」 「星のよく見える山頂へも連れていってくれたね。 それからだよ、天体に夢中になったのは。 民族学でいろんな場所を探索しながら、そこで夜空も観察してる。 でもね、おじいちゃんが案内してくれたところ、道を忘れちゃって もう行くことができない......」 「また連れていってやる」 「おじいちゃん......」 そこで鬼が祖父の首の後ろを片手で打った。 「逝くべきところへ行け!」 祖父の顔がハッと我に変わった。
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