山小屋にて

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僕は慌ててカメラを取り出しシャッターを切り始めた。 それから、座り込んで目で眺め始めた。 レンズの向こうにも、まぶたにも、もう祖父は映らない。 それでいい。 それでいいんだと、自身に言い聞かせた。 涙で流れ星が揺らいだ。 そのとき鬼が言った。 「俺はな、もっと昔は人と勝負して勝って、そいつを食らっていた。 しかし時代は進んでしまったな。 人間とは、煮ても焼いても食えたものではなくなったな」 鬼は鬼で満足気な様子だった。 ――完――
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