死活問題(焦)

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死活問題(焦)

「⋯⋯ん⋯⋯」  立ちくらみが落ち着き、ベッドに腰掛ける。そして改めて死神の言葉を考えた。 「あと一回、一階に行けば死ぬ⋯⋯」  ひきこもり歴2年の私だ。一日ぐらい一階に行かなくても、それこそ死にやしない。  と思ったとき、 「⋯⋯トイレはどうするの?」  携帯トイレがあるわけでもない。男子なら窓からササッとやれば済むかもしれないが、私は女子である。そういうわけにはいかない。 「⋯⋯食事はどうするの?」  今日はパパもママも法事でいない。食事はユーバーイーツで取るよう言われているが、ドアを開けなきゃ二階にまで運んではくれない。そもそも家に上がることは禁止されているかもしれない。仮に鍵を窓から投げて渡すとしても、鍵のありかも一階だ。  トイレも行けない。  食事も取れない。  いや、食事は我慢できたとしても、飲み物なしに過ごせない。  死神の生きた瞳。しわがれた声。あの死神は本物っぽかった。それが一階に行けば死ぬと言ったのだから、本当にそうなると思ってしまう⋯⋯。  宅配便を頼んでもドア(鍵)の問題は変わらないし、親戚は一同揃って法事に出かけている。ひきこもり歴2年だからネットの友達しかいない。リア友とは縁を切ってあるし、ネットの友達に自宅を教える勇気はない。  そして大きな問題は、こうやって追い詰められるとおなかを痛くする私の体質。  最悪、おしっこはなんとかできたとしても、部屋の中でおなかをくだすなんて真似はできない。  どうしたらいい?  どうしたら済む?
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