笑門来福(確)

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笑門来福(確)

 そして家に着いた。  すると、法事でいないはずのパパとママ、親戚のシン兄ちゃんまでもが拍手で迎えてくれた。  私が???と混乱していると、パパはしわがれた声で言った。 「おかえり! 久しぶりに外に出れたな! おめでとう!」  ママも続く。 「おかえり! なんて嬉しい日なの! 今日は最高の一日だわ! おめでとう!」  シン兄ちゃんも笑顔だ。 「おかえり! 暑かっただろう。とりあえず麦茶飲もうぜ。おめでとう!」  瞬間、私はみんなに仕組まれた、と察知した。  でも、パパのしわがれた声はいったいどうしたの? 「ハハッ! 良い演技をするために強い酒をガンガン飲んだんだ。吐きに吐いて声を枯らしたが、大丈夫、明日には戻ってる。そんなことより、アユミが勇気を出せたことが何より嬉しいよ! 俺は今、大興奮状態だ!」  私はへなへなと座り込む。 「なによ⋯⋯馬鹿やっちゃって、ふざけんなっ」  そう言うしかできなかった。  図らずも家から出た私。  おなかが痛かったからなのに、みんな本当に嬉しそう。  私も少し涙ぐんでくる。  すぐには無理だけど、少しずつ体と心を慣らして、普通に外出できるようになろうかな。  きっとそれが正解だよね。  そうでしょ?  優しい死神さん? 〜END〜
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