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「氷おにぎり」
「うるさいなぁ」
今持ってくるから待っててよ。
ったく、たまには自分で取りに行ったらいいのに。
階段を降りればすぐじゃん。
しかも、ただの氷じゃなくて「氷おにぎり」ときた。
彼女のために何個もストックしているが、今日はもうこれで7個目だ。
すぐにできるもんじゃないんだから、少しは控えめにしてほしい。
そもそも部屋には、彼女が食べる物が山ほどある。
クーラールームは、僕からすればただの業務用の“冷凍室”だった。
氷はもちろん、彼女の好きなアイスクリームやシャーベットが、棚の上から下までズラッと並んでいた。
キッチンの冷凍庫に入りきらない物は、ひとまず彼女の部屋に置かせてもらうのが日課だった。
お腹が空いたんなら、適当に何か食べればいいじゃん。
そう言うと、彼女はムッと顔を膨らます。
いつものことだ。
それを知っているから、黙って取りにいくことにした。
彼女の名前は、“たま”という。
氷咲たま。
僕と同い年で、青い髪と青い瞳を持つ。
自他共に認めるサバサバ系女子。
極度のめんどくさがり屋で、一日中ゲームをしてるエリート級の引きこもり。
部屋の中でひんやりクッションを椅子がわりにし、どでかいイヤホンを耳に取りつけながら快適なスローライフを満喫してる。
スローライフ…ではないか。
自由気ままな生活を送ってるって言っておこうかな?
国際的に危険視されている妖魔にしては、かなり平和な日常を送っているのではないだろうか?
あれもこれも、“博士”のおかげなんだけれども。
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