救世主

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「――その頃、僕はとある家の専属医師として働いていた。……きっと、恵まれていたんだろうね。とある良家の専属医師として、随分な高給も頂いていた。  だけど……どうしてか、そんな恵まれた境遇を僕は喜べなかった。何とも我儘な言い分だと自分でも思うけれど……それでも、僕の求めていたものと何かが違う気がして。尤も、その時はそれが何なのかは分からなかったけれど。  ……そして、そんなある日のことだった。それまでの僕の――後から思い返せば確かにあった揺るぎのない価値観が、不意に音を立てて崩れたのは」
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