伊織さんと私

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 さて、そんなゆるゆるのアラサー男性、高坂(こうさか)伊織(いおり)さんと高校一年生の私、宇月(うづき)冬雪(ふゆ)がいるのは、ある小さな雪山の中腹――その辺りにひっそりと在する、和の(おもむき)漂う素朴な庵です。  ところで、私達は親子でも兄妹でもない――言ってみれば、血縁関係などまるでない他人です。そんな私達が、どうしてこうしてひとつ屋根の下で暮らしているのかというと……いえ、ごめんなさい嘘つきました。一緒に暮らしているわけではなく、ただ私が通っているだけです。平日の放課後もしくは休日、およそ週に4日ほど通っているだけです。  尤も、私としてはこれでも足りないくらいなのですが……まあ、あまりに頻度を増やしすぎて煙たがられてしまっては元も子もないですし。
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