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「……ふ、冬雪ちゃん!?」
そんな私の言葉に、何とも珍しくも少し慌てた様子の伊織さん。おや、何を狼狽えているのでしょう? ともあれ、続けて口を開き――
「何ともらしくないではありませんか、伊織さん。いつものように、無精髭にダボダボのTシャツ姿でお会いになれば良いではありませんか。いつものように」
「……えっと」
そう話すと、これまた珍しく困惑したご様子の伊織さん。ですが、何を困惑なさっているのでしょう? 私はただ、事実を申しているだけですのに。
「……ふーん、そっか。じゃあ、伊織くんは私と会うためにきちんとお洒落してくれたんだね。それって、私が特別ってことかな?」
「……っ!!」
すると、ふっと微笑み伊織さんへとそう問い掛ける優美な女性。……ですが、分かります。これは、明らかに私に対する言葉――しれっと牽制をすべく口を挟んだ私に対する挑発です。そして、その言葉は十分に理に適っていて。
ともあれ、肝心なのは……ゆっくりと顔を上げ、恐る恐る伊織さんの表情を窺います。そして――さっと、すぐさま目を逸らす私です。
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