第三章 犬、鴨を喰らう の巻

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「おう、歳? 上手くいったか?」 「芹沢鴨、粛清。ただし、俺達の手によるものではありません」 「報告は病死にしておこう。松平容保殿は表向きには敵意を煽るために長州藩士がやったことにしてくれるとの仰せだ。心配するこたぁねぇ」 「近藤さん…… 沖田、山南、原田…… 全員、芹沢鴨に負けてるんです。士道不覚悟で切腹をしたいと思っております」 それを聞いた近藤勇は軽く肩を竦める。 「歳ぃ? ダメだぜ? まだ、お前達の力が必要なんだ。俺が許さん。それに相手に無抵抗にされることは士道には関係ねぇ。弱いだけだ、気にするこたァねぇ」 「くっ…… わかりました。沖田や山南や原田にも言っておきます」 「芹沢さんは強い。負けたとしても恥に思う必要はねえぜ? ってことは、犬千代が殺ったのか?」 「え、ええ……」 「成程、わかんねぇことだらけだなぁ。歳ぃ? 沖田と山南と原田は犬千代が芹沢さんを殺ったってことを知ってるのか?」 「三人とも、気絶していたので犬千代が仕留める現場は見てません。俺が殺ったものと思っています。帰りは一緒でしたが、犬千代のことは後詰め程度にしか思っていません」 「よし、これでいい。芹沢鴨の殺害は歳が殺ったと思わせておけばいい。豊田犬千代の関与はなしだ。誰にも口外することなかれ」 「は、はい!」 「表向きには長州藩士による殺害。裏向きには土方歳三ら四名による殺害。それ以外は何も無い。いいな?」 「は、はい」
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