第三章 犬、鴨を喰らう の巻

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 二日後の九月十八日、芹沢鴨と平山の葬儀が行われた。芹沢鴨は新選組の局長と言う立場もあり、新選組が費用を全額出しての盛大なものである。 新選組隊士は喪服である葬儀用の浅葱色の(かみしも)姿。浅葱色の裃は「武士」が着る喪服で、新選組隊士のような「浪士」が着るようなものではない。葬儀参列者の中に僅かに交じる心無い武士は「浪人風情が武士(さむらい)気取りかよ」と侮蔑の目で見る。 その葬儀の場で、近藤勇は涙を流しながら弔事を述べたと言う。その涙の意味を盟友・芹沢鴨を喪った悲しみだと思う者は葬儀の参列者の中には殆どいない。新選組を自分一人のものに出来る嬉し涙だと思う者が大半である。 葬儀が終わったところで、近藤勇は隊士全員を新徳寺に集め新選組の新組織体制を隊士達の前で発表することになった。 「皆の者、芹沢鴨局長の葬儀への参列ご苦労であった。芹沢鴨局長が亡くなったことで新選組は局長単独体制となる! それに伴い、組織再編の発表を行う!」 近藤勇は巻物を広げ、各役職の名前を読み上げていく。
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