第三章 犬、鴨を喰らう の巻

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「新選組局長、近藤勇!」 普段はこの前に「新選組局長、芹沢鴨」と呼ばれる筈なのだが、これがない。隊士達は違和感を覚える。まぁ、すぐに慣れるだろうと気分は軽い。 「新選組副長、土方歳三!」 試衛館時代から二人で一人の一蓮托生の関係のような盟友。土方さんを副長に据えるのは問題ない。これも揺るがないものだと隊士は皆思う。 「新選組総長! 山南敬介!」 総長? ここに来て新設された新しい役職である。それを聞いた隊士は思わずにざわめいてしまう。局長・副長に続く組織全体を総括する長なのだろうか。山南さんなら強くて人格にも優れているし問題はないと隊士達は納得する。 ただ、最近は池田屋以前に体を病んでの療養状態。それにも拘らず遊郭通いをやめずに「オキニ」がいるために、一部隊士からは「近藤さんは同じ試衛館の仲間を贔屓している」と陰口を叩かれている。 「続いて、各組長を発表する! 一番隊、沖田総司!」 新選組の隊の順番は強さに比例するのかな? 一番強い沖田さんが一番隊組長なのは当然のこと。隊士全員納得の人選である。 「二番隊、永倉新八!」 永倉さんも強い。木刀を使った打ち合いでも沖田さんに勝るとも劣らない腕前を見せている。賛否こそあれ、隊士全員納得の人選である。 「三番隊、斎藤一!」 場がざわめいた。八番隊まで全員試衛館組の出で埋まると思っていたのに、選ばれたのは俺達と同じく京都に来てから入隊してきた新参者の採用は意外なもの。試衛館贔屓だと思われないための上位採用だろうかと下衆の勘繰りを行う隊士が少なからず。 ただ、斎藤一が試衛館に一時期通っていたことを知る者は少ない。 「四番隊、松原忠司!」 またも、新参者の起用である。松原さんと言えば柔術の指導も行っていると言う。そういう点を考慮されての四番隊起用だろうか。 この辺りから、隊の順番が強さに比例するものではないと気づく者が増えてくる。
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