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第四章 池田屋事件! の巻
新選組の任務は京の都の警護である。一番隊から十番隊の九隊が巡回表に従い昼夜と手分けして過激勤王志士の取り締まりを行うものである。
新選組の担当地域は西本願寺と祇園の周辺。特に祇園は家屋や商店が迷路のように密集する繁華街で、極めて見通しの悪い路地が縦横に走っている。
昼間でも細く暗い路地が多く、ましてや夜など一寸先は闇、提灯や頼りない月明かりを頼りにしての危険な警護である。
それ故に、足を踏み入れる者は躊躇する者が多い。これでは任務にならない、躊躇することを士道不覚悟として切腹を命じていれば瞬く間に隊士の数は減るのみ。
そこで、新選組は「死番」制度を作るのであった。
死番とは捜査の時に最初に突入する役割の者である。死番は毎日日替わりになっており、その日の死番の者は朝から死ぬ覚悟を決めていた。臆することは許されない、例え一寸先の見えない路地であろうと躊躇することなく突入しなければならない。
当然、死番に選ばれ躊躇し後退しようものなら…… 士道不覚悟により切腹である。
組長格の隊士は自分が率いる部下の隊士を心から大事にするものばかり、特に試衛館勢は「近藤さんと土方さんには内緒な」と死番の役割を日替わりの予定を無視して志願する者が多い。
沖田・永倉・藤堂・原田が自分から死番を引き受ける回数は多い。犬千代も番外隊組長と言う立場を活かして日替わりで各隊の巡回に混じる事が多い、その時には死番を決まって引き受けている。しかし、犬千代の場合は目に頼らず強い嗅覚で敵の有無が分かるために、死番であろうと扠したる問題はない。
このように、新選組は命をかけながら過激派勤王志士の惨殺や捕縛を行ってはいるものの…… 京都の民からの評判は最悪。新選組と言う名を拝命しても「みぶろ」呼ばわり。
理由は京都人の京都人以外を見下す気質に加え、新選組の皆が侍ではなく浪士であること。
更に言うなら、長州藩士は浪人であっても「金だけは持っているお客様」その長州藩士を取り締まる新選組は敵だと考える者(主に商人達)が多いことにある。
往来を歩いているだけで暴言は当たり前、酷い時には投石をされたり水打ちの水をかけられることも。
永倉はその当時のことを「辛い日々であった。しかし、近藤さんはもっと辛かったに違いない」と日記に認めている。
このような臥薪嘗胆の日々が続くこと一年、新選組はこれと言った成果を出すことが出来ずに幕臣の中にはその存在を疑問視する者が増えていた……
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