第四章 池田屋事件! の巻

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 そんな虚しく過ぎる一年が終わろうとする五月初頭、京の都に過激派勤王志士が集まってきていると言う情報が近藤勇の耳に入ってきた。 京都巡回の任務に就く隊士からも「見慣れない浪人が増えている」「長州訛りや土佐訛りの浪人をよく見る」「酒場も貸し切りが多い」「各藩邸の警備が厳重になった」と多くの報告を受けている。 近藤勇は「過激派勤王志士共が何かを企んでいる」と考え、京都巡回警護とは別に隊士達に監視を命じるのであった。浅黄色の羽織を脱ぎ、虚無僧・僧侶・越中富山の薬売り・商人などに変装させて見慣れぬ浪人の追跡を行ったのである。 一所懸命の捜査を行うこと一ヶ月、大物過激派勤王志士である肥後藩浪人の宮部鼎蔵が骨董商桝屋に頻繁に出入りしていることを突き止めた新選組は、捕縛のために踏み込むのであった。 近藤勇は主だった組長格の隊士を引き連れ、桝屋の扉を乱暴に開けた。 「新選組である! 肥後藩浪人宮部鼎蔵を差し出せ!」 骨董商桝屋店主、桝屋喜右衛門は「みぶろ」達の顔を見た瞬間に顔を真っ青にして脱兎! しかし、瞬く間に捕縛されてしまう。近藤勇は拘束された喜右衛門に尋ねた。 「宮部鼎蔵を引き渡して貰おう!」 「な、なんじゃあ! いきなり店に踏み込んできて! そんな奴は知らん!」 それを聞いた犬千代はクンクンと鼻をひくつかせた。吉右衛門以外のニオイは残滓程度、現在桝屋には吉右衛門以外誰もいないと言うことになる。しかし、他の浪士のニオイよりも厄介なニオイを嗅ぎつけてしまう。 「近藤先生、ここには誰もいません。ですが、大量の火薬のニオイがします。大量の鉄砲と刃物のニオイも」 近藤勇はニヤリと口角を上げ、吉右衛門の頬を軽く叩く。
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