第四章 池田屋事件! の巻

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(いくさ)でもするつもりか? あ!? 普通とかよく言えたもんだな? あ!?」 「うぅ……」 犬千代が更に鼻をヒクつかせると、大量の浪士のニオイを感じた。近頃、京の都の往来で嗅ぐことが多いニオイである。 「近藤先生。長州・肥後・土佐のニオイがします」 「誰もいないと言ったではないか? 隠れているのか?」 「いえ、紙です。紙に染み付いたニオイです」 「成程、手紙か。沖田! 原田! 手紙を回収しろ!」 沖田と原田は居間へと踏み込み、状箱を全て開き手紙を回収を行う。斜め読みでの内容は『同士が続々と京都に集まっている』と言う旨のみ、その目的までは書かれていない。  吉右衛門は新選組によって屯所の蔵へと連行された。褌一枚に剥かれて拘束され、棒で滅多打ちにされる拷問が加えられるが何も言うことはない。 気絶をすれば、水をかけられて覚醒に導かれての拷問再開。 それを行うのは土方、近藤勇はそれを黙って見るのみ。 「あれだけの武器と火薬を何に使うつもりだったのだ! 言え!」 「知らん! 店の在庫が多いぐらいで拷問にかけるとは! お前達どうかしてるんじゃないのか!?」 「とうにどうかしている! それにしても元気だな? ならもっと痛めつけてやろう! 吊るせ!」 吉右衛門は蔵の二階の梁より逆さに吊るされた。それを見る土方の手には五寸釘と金槌が握られている。 「ちょっと痛いぞ? おい、悲鳴が耳障りだ。誰か猿轡かけとけ」 ごすん…… ごすん…… ごすん…… 吉右衛門の足の甲に五寸釘が打たれる。一回金槌が振り下ろされる度に体が大きくよじれるが、猿轡をかけられた声なき叫びが動きとなっているだけである。 「どうだ? 喋る気になったか? 楽になりたくないか?」 「……」 「まだ喋らないか? 何に義理立てしているのだ? じゃあ次だ」 吉右衛門の足の甲より貫通した五寸釘に百目蝋燭が突き立てられ、火が点けられると苦悶の表情を浮かべる。 「どうだ? 喋る気になったか?」
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