第四章 池田屋事件! の巻

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 新選組は八坂神社へと集合し、京都守護職の応援部隊と合流することになっていたのだが…… 梨の礫。日和見主義で動静を見守っているとでも言うのか! 何よりも長州藩だけではなく、土佐藩・肥後藩などの幕府とは良好な関係を築いている藩士も参加していると言う。未確定情報ではあるが、潔白であった場合はそれらの藩と揉めるのは自明の理。 やはり、今の幕臣の中に男児無し! 御所が焼き討ちにされ、天皇が長州藩に攫われようとする中で他の藩がどうとかとメンツのことしか考えてないと言うのか! ならばもう頼らぬ! 我々新選組単独で計画を止めてくれる! もし、他の藩士が潔白だったとしても! それは新選組の勇み足! 我々が腹を切り責任を取ればいいだけのこと!  近藤勇が今日を命日とせん覚悟を決めた瞬間、犬千代と共に監察の山崎が息せき切って現れた。 監察の山崎であるが…… 美形だがとても地味な顔である。不思議なことに誰が何度顔を見ても覚えられないし思い出せないのだ。新選組の中にも顔を覚えている者はいない。 採用を決めたのは土方であるが、土方自身も山崎の顔を覚えていないために顔を見る度に「ここは新選組の屯所であるぞ! 隊士でもないのに入ってはいかん!」と言うやり取りを何度も繰り返す始末。 土方はその山崎の顔の特徴を活かして監察役、いわゆるスパイの任を与えた。隊士の動向報告、潜入捜査、情報操作、破壊工作、何でもござれ。 ただ、その報告を行う時は基本は手紙。直接、面を突き合わせての報告を行うと「君は誰だね?」と言われてしまうからである。  土方は犬千代に尋ねた。 「犬千代、隣にいる男は誰かね?」 「山崎さんです」 「ああ、監察の山崎か。顔を忘れてたよ」 ちなみに、犬千代も山崎の顔は覚えていないし覚えられないが「ニオイ」で認識しているために問題ない。山崎は親以外の者でちゃんと自分を認識してくれる犬千代に極めて心安くしている。 ちなみに、山崎が今回伏見神社に入った時には隊士から顔を覚えられていない故に「見知らぬ者が入ってくるな!」と、この非常時故に斬り殺されそうになったのだが、犬千代が間に入ることで事なきを得ていた。
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