第五章 犬と龍と海と春 の巻

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 新選組であるが、池田屋事件の功績で誉れある侍にはなったものの京の都の民からは「みぶろ」と蔑まれることに変わりはない。 京の都の民であるが、特に商いを行う者達は長州藩の過激派勤王志士とは上手くやっていた。むしろ、上客と言っても良い。 そんな長州藩の過激派勤王志士を池田屋事件で一網打尽にしたことで、長州藩の逆鱗に触れたから京の都は燃えたのだと言う者が多い。 一番隊から十番隊、昼間に京の都の往来を練り歩けば飛んでくるのは「みぶろみぶろ」と暴言ばかり。 弱き人を守りたいと志を持って新選組に入った隊士は、その弱き人より感謝も経緯も得られないことに絶望し新選組をやめようとするが、隊規「一つ、局ヲ脱スルヲ不許」に引っかかるために辞めることも出来ない。地獄のような切腹を見て、いつかは自分に訪れるかもしれないと言う恐怖に耐えることが出来ずに逃げ出す者がいるがすぐに捕縛(つかま)り、鬼の副長土方歳三の目の前で切腹させられている。 このような隊士を見て、怖くなり逃げ出した隊士ももれなく切腹。 自分達は京の都を守っているのだから甘い汁を吸ってもいいではないか。そう考える隊士が増長し、京の都の商い人より「みかじめ料」を取るようになったのだが、隊規「一つ、勝手二金策致不可」に引っかかり、鬼の副長土方歳三の目の前で切腹させられている。 京都警護中、敵に遭遇したこと恐れをなして後退する隊士がいたのだが、それを報告されて程なくに「一つ、士道に背き間敷事」つまり、士道不覚悟として鬼の副長土方歳三の目の前で切腹させられている。
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