友情の絆

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マールさんは、そう言って苦笑した後、直ぐに真顔に戻った。 「お前のお陰で売り上げも上がってきている。だがそれに慢心すること無く、今まで通り、修行に励むように」 「クイ」 俺はマールさんの思惑に気付く事無く、頷いた。 その日の開店後。 「いらっしゃいませ」 マールさんがシャッターを開けると、既に行列が出来ていた。 それも初見の客が多いらしく、客からは「今日のお勧めは何ですか?」とか、訊かれている。 俺がフルーツケーキを作り終えて、冷蔵庫にしまった時だった。 接客に一区切りついたマールさんが、俺に向かって言う。 「センヤ、イライザと買い出しに行ってこい。買う材料は、これだ。言っとくが、寄り道はするなよ」 「クイ」 何故、突然、材料の買い出しを頼まれたのか? だが、冷蔵庫をよく見ると、砂糖と小麦粉、卵が足りなくなっている。 ちと早く作り過ぎたか? だが、棚卸し(在庫チェック)は、マールさんが毎日、閉店後にしてる筈だ。 俺は不思議に思ったが、常連客がそろそろ来る時間なのを思い出した。 イライザと2人きりなのが、何とも気まずいが、昨夜の礼を言うチャンスだ。 と、ショコラの生成をしてたディランと目が合った。 奴は、上手く仲直りしろよと言いたげに俺に向かって無言でウインクした。
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