アナスタシアでの初仕事

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アナスタシアでの初仕事

確か、俺とイライザは開店前の掃除をするように言われてた筈だ。 俺は、ねみーのを我慢して、ベッドから早々に起き上がった。 マールさんがケーキの仕込みをしてる厨房と、俺達が掃除してる売り場は、敷居がねーから、筒抜けだ。 俺は箒で、なるべく埃が立たねーように床を掃く。 イライザはショーウィンドウを拭きながら、俺に小声で言った。 『こんな事して何になるのよー。早くケーキ作り、教えて欲しいわよね?』 彼女が何て言ったのか、さっぱりわかんねー。 こりゃ当分はディランが居ねーと不便でしょうがねーな。 『無駄話をするな!掃除も立派な仕事の1つだ!』 マールさんには聞こえてたらしく、イライザに向かってゲキが飛ぶ。 俺まで睨み付けられたじゃねーか。 イライザは悪びれもせずに囁いた。 『この地獄耳親父!』 店主は尚も彼女を睨んだが、イライザは気付いてない。 こりゃ先が思いやられるぜ。 俺は手早く掃き掃除を終えると、ゴミを捨て、マールさんの元に、次の指示を伺いに行った。 「掃除、終わりました」 日本語で言ったから、マールさんも日本語で返してくれる。 「早いな。きちんとゴミは取ったのか?」 「クイ」 「じゃあ、今から生地の作り方を見せるから、開店したらお前も作ってみろ。ただし、売り場には出さないから、私が味見したら棄てる」
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