アナスタシアでの初仕事

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それは、十分、承知の上だ。 只…生地の作り方なら、日本でも散々やったんだよな。 だが、独学と本場の教え方は違うかもしれねーから、俺は返事だけして、マールさんの生地の作り方を見た。 先ずは型に卵を入れ、ハンドミキサーで攪拌する。 それを湯煎し、砂糖を加えて更に混ぜる。 小麦粉を加え、ヘラに持ち変えて、中央から型の端へと切るように混ぜ、牛乳を加えて更に混ぜる。 滑らかになったところで、マールさんは予熱していたオーブンに生地を入れ、加熱した。 ここまで一切、説明は無かったが、大体、俺が日本で作っていた生地の作り方と似てるな。 「後は焼き上がってから、熱い内に型から抜き、ケーキクーラーで冷やすだけだ」 俺が返事をしたところで、ようやく掃除を終えたイライザが、やって来た。 『終わりました』 『何だ、遅いな。コッチも大体、終わったぞ。後はナッペして、クリームとフルーツを飾るだけだ』 『待っててくれたって良いのに…』 イライザが何て言ったかは、わかんねーが顔からして不満そうだ。 この師弟、犬猿の仲になりそうだな。 『掃除が遅いのが悪い。生地は明日も作るから、それ見て覚えろ。言っとくが、細かい説明は一切しないからな』 「クイ」 そこへディランと他の店員達も、やって来て、手慣れた様子で開店準備に取り掛かった。
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