アナスタシアでの初仕事

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『いらっしゃいませ』 マールさんが、修行の時とは打って変わった笑顔で店のシャッターを開ける。 いよいよ、営業開始だ。 マールさんが店頭に立っている間に、ディランや他の店員達はケーキ作りを始め、イライザは店員の隣で、その様子を見ている。 ケーキ作りは、教わるというより、見て盗むものだ。 それを自分のものに出来るかは、自分に全て掛かっている。 俺も厨房の隅で、さっき見たマールさんの作り方と、日本で培ってきた方法で、ケーキを作ってみた。 生地と生地の間にホイップした生クリームを塗り、周りもナッペする。 そして、ケーキの上に生クリームを絞って乗せ、その間に苺を盛り付けて、完成だ。 日本でも売られているショートケーキだな。 確か閉店後に、俺はイライザと語学学校に行くから、直に感想は聞けねーが、まあ、あのマールさんのことだ。 明日、又、作り直しだろうな。 俺はケーキスパチュラで一人分だけケーキをカットすると、厨房の冷蔵庫にしまった。 そして、マールさんは手が空いてねーから、他の店員に指示を仰いで、型やヘラ等の洗い物を始めた。 早くパティシエとして成長してー。 その為には、どんな仕事だろうと、一生懸命、頑張って働こうと思っていた。
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