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マールの企み
閉店後。
千夜とイライザが、語学学校に行った後。
店主のマールは、ディラン達、他の店員と後片付けを済ませた後、厨房の冷蔵庫を覗いてみた。
見ると、ショートケーキが一人分、置かれている。
見覚えの無い、そのケーキに、マールは居室に戻ろうとしていたディランを呼び止めた。
『ディラン、このケーキは、お前のか?』
ディランも見習い歴は長い。
マールは、彼をそろそろ店員に…と思っていた。
ところが、予想に反してディランは、記憶を辿るように考え込んでいる。
『違うのか?』
『僕じゃないのは確かです。確か…そうだ!センヤが開店中に厨房の隅で作って、冷蔵庫に入れてました』
『あの見習いか…。生地の作り方しか見せてない筈だが…』
しかし、物は試しだ。
マールはフォークを取り出すと、どれ、私が賞味してやるかと思いながら、どこが悪いか明日、千夜に言う為、ひと口食べる。
「…」
『店主?どうされましたか?店主?』
ディランが不思議そうに、マールに言い寄るのを彼は片手で制した。
『…何でもない。今日の賄いは、お前が当番だろう?早く上がると良い』
『…解りました。じゃあ、お先に失礼します』
ディランが去った後、マールはフォークを思わず落とした。
『美味い…』
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