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俺はマールさんに向かって頭を下げた。
その日から、俺は厨房にこもって、次から次へと出されるレシピのケーキ作りに追われた。
それから少しして。
俺は、その日もマールさんに渡されたレシピのケーキを作り続けていた。
何故か、誰も何も言ってくれねーが、まだ修行し始めたばかりだし、特にこれといって、上達してるところがねーんだろ。
ディランとイライザは、2人仲良く(俺には、そう見える)足りなくなってきた材料の買い出しに行っていた。
客が来たのか、マールさんの愛想の良い声が聞こえてくる。
『いらっしゃいませ』
当然フランス語だから、会話の内容までは、俺にはまだ早口という事もあって、わかんねー。
と、いけねーいけねー。
ケーキ作りに集中しねーとな。
『ここのケーキ、最近、前より美味しくなったから今日も買って行くわ』
『メルシー。このショコラケーキは、如何ですか?私の自信作なんですよ』
『店主、腕上げたんじゃない?じゃあ、ショコラケーキとチーズケーキを貰おうかしら』
『毎度あり!どっちも、私が最近、改良を重ねたケーキで、お勧めしますよ』
俺は知らなかった。
常連客の買ってったケーキが、どれも俺が作ったモンだという事に。
アナスタシアは上手くいっている。
だが、その栄光は、俺がマールさんに支配された上での成功だという事に。
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