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「可愛い彼女だね」
「…見たのか?」
「イライザが見せてくれたんだよ。『私には敵わない位、悔しいけど、可愛い』って」
香澄の魅力は見た目だけじゃねーが、イライザがディランに、そんな事を言っているとは思わなかった。
「ディランは、どうなんだよ?」
「?何が?」
「イライザの事、好きなんじゃねーのか?」
瞬間、ディランの顔が耳まで紅くなる。
しばし流れる夜の静かな沈黙。
ディランは、やがて頭を掻きながら、言った。
「誰が、あんなじゃじゃ馬。僕の理想とは、掛け離れているよ」
「理想と現実は違うモンだぜ?」
俺も理想は歳上の女だったが、香澄はタメだしな。
「そ、それよりもセンヤは、こんな時間に何しに来たんだい?そのペンダントの事なら、イライザの部屋に行く筈だよね?」
そうだ。
この騒ぎ?で、すっかり忘れていたが、俺はケーキの事でディランの部屋を訪ねたんだった。
「ディラン。イライザが言ってたんだが、俺の作ったケーキは店頭に売りに出されているのか?」
俺が言った言葉に、ディランは目を丸くする。
「あれ?マールさんから聞いてないの?今、アナスタシアのお客様達の味覚を惹きつけているのは、センヤのケーキだよ?」
その瞬間、驚きと喜びが全身を駆け抜けた。
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