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卒業までに、組長である親父を納得させるケーキを作ることが、俺がパティシエを目指して良い条件だった。
そして、親父を納得させたのが3年の3学期。
もうほとんど製菓学校は埋まっていたが、アナスタシアの修行は厳しいらしく、突然、辞めた奴がいたところで、俺からの連絡があったらしい。
紹介してくれた担任の教師に、俺は感謝した。
…だが、それだけ修行が厳しいっつーことは、今までみてーにイラついても、手を出す訳にはいかねーだろ。
これは、相当、覚悟をしといた方が良いかもしれねー。
パリの街並みを3人で歩く。
香ばしいパンの香りが俺達を包み込んだ。
『わあー!フランスって花が沢山、咲いていて綺麗ねー。クロワッサンも美味しそうだわあー』
イライザが何やら母国語で喋っている。
何て言ってるかまでは、解らねーが、表情を見る限り、機嫌良さそうだ。
「イライザさん、お金があるなら、何か買って行っても良いよ?センヤくんは、パリに和菓子屋さんがあるのを知ってるかい?」
「いや、知らねーな。この辺にあるのか?」
前回、来た時は少なくとも見掛けなかった。
「イライザさんの買い物が終わったら、案内するよ。たまには日本の味が恋しくなる時もあるだろう?」
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