健史の視界に映る仁美

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   季節は変わり夏になり、スーパーで仁美ちゃんを見かけた時、俺のことは例によって全く視界に入っていなかったが、通り過ぎる際に誰かとの電話でこんな話をしていた。 「……それでね、とうとうマッチングアプリに登録したの!大手の口コミの良いところにしたんだ〜。パワハラ係長のせいで無職になったからさ、ヤケクソみたいなもんだけどね……でもさ、このまま病みたくないじゃん?」    …………!?  マッチングアプリ?俺が登録したら、正々堂々とコンタクトをとれるではないか。パワハラのせいで辞めたというのも気になった。可哀想に、あんなに良い子なのに。事情は違うが職場の地獄は俺も経験した。一度は諦めたものの、話がしたくて堪らなくなった。  俺は早速、大手三社に登録し三社分の会員費を払った。そして片っ端から捜した。二社目でとうとう見つけた。
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