温泉で過ごすクリスマス

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 婚活のマッチングアプリを通して知り合った、恋人の相馬健史は二つ下の三十才である。絶対画像を加工していると思っていたルックスはそのまんまで、某俳優に似たイケメンで、職業は公務員だ。この二つが揃うだけで奇跡と言えるが、もう一つ驚くことがありそれが決め手になった。彼が一人暮らしをしているマンションが、車で五分ぐらいのところにあり近所だったことだ。最寄りのドラッグストアとスーパーが同じだった。会う前からローカルな話題で盛り上がった。付き合わないという選択肢はなかった。  しかし疑問はあった。モテるだろうに何故リアルの出会いで探さないのか、何故容姿が十人並み、いや、三十人並みで且つ年上の私と付き合いたいと思ったのかということだ。会いませんか?と熱心にアプローチしてきたのは健史からだ。私のプロフィールのどこに惹かれたか分からなかった。会って二回目には付き合って欲しいと言われた。騙されているような気分だったが、一緒に時間を過ごしているうちに、リアルでは上手くいかない理由を何となく理解した。彼は円滑なコミュニケーションが苦手なのだ。  職業を考えると、極端に人との交流が不得手ということはないはずだ。だが、私に対しては、いつも何か言いたいことがあるようで結局は言わない。こちらから話題を振っても聞いていなくて、トンチンカンな受け答えをすることがある。時おり、異様に素っ気無い態度をとられ、嫌われたのでは?と思うことがある。そうかと思えば、次に会う時は何事も無かったかのように愛想良くしていることもある。気分屋でマイペースなのだろう。これでは付き合う女性に不満が募る。  私達は年齢に相応しく、身体の関係は早めに持ったが、寝ること、食べること以外では関係を深めていない。初めての一泊旅行、しかもクリスマスだというのに、バスの中では微妙な空気が流れていた。
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