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彼女の部屋を出ると、館内の消灯時間が過ぎてしまったのか真っ暗だった。ロビーに飾ってあったクリスマスツリーの電飾も消えていた。部屋の前でLINEを確認したが、健史からの連絡はなかった。
やはり怒っているのだろうか。気は重いが帰らないわけにはいかない。恐る恐る部屋の戸に手をかける。ギギッと音が鳴る。
スリッパを脱いで襖の戸を開けると、室内の電気まで消えていた。よく見えないが机があるのは分かる。おそらく奥の部屋に布団は敷かれていて、健史は呆れ果てて寝てしまったのだろう。私は二人の仲において致命的なことをしてしまったようだ。
帰りのバスは離れたところに座った方がいい。そして札幌に着いたら気まずいまま
──別れ話?身から出た錆とはいえ、そんな展開にはしたくない。
そーっと畳に足を踏み入れると、奥の襖がつつつっと開く音がした。影がゆっくりと動く。
「ひっ」
思わず悲鳴を上げる。さきほどのサンタクロースの言葉が頭を過ったからだ。
刺されるのは、私……なのか。
次第に大きくなった影にガバッと正面から身を拘束され、固いものをお腹に突きつけられた。
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