増幅されていくもの

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「……良かった。帰って来ないんじゃないかと思ってた」    …………?  い、痛くない。助かったのかな。 「ご、ごめんね。長くなってしまって。あ、あの、健史くん、これ……何?」  健史が手に持っている筒状の固いものを確かめるように、触りながら言う。 「小型の懐中電灯だよ。部屋にあるのをさっき見つけたんだ。消灯したからこれを使って、女の子の部屋へ迎えに行こうかと思っていたんだけど……嫌がられるかもしれないと思って、なかなか覚悟が出来なかった……」    ……嫌がられる?  ……覚悟ってどういうこと?  懐中電灯を畳の上に置き、手ぶらになった彼にもう一度、拘束される。しばらくの間、健史は私を離さなかった。
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