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全く気づかなかった。確かにスーツの若い子とぶつかったのは覚えている。年下に見えたから、責任負わせるのが気の毒で、前から割れていると咄嗟に嘘をついた。
「気を遣って、前から割れていると言ってくれたんだろうと思った。弁償出来なくて心残りだった」
「で、でも買い換えようと思ってたし、全然それは気にしてないよ。それにさ、そんな偶然ってすごいからさ、言ってくれたら良かったじゃん?」
「……偶然じゃないよ」
彼は今にも涙が溢れそうな顔で、私の膝頭のあたりを見つめながら話し始めた。
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