この雪のような奇跡を

増幅されていくもの

　
　一年前に辛いことがあり調剤薬局で思わず泣いてしまって私から鼻セレブをもらったこと、私と接点を持とうと思ってスーパーへ通って張り込んでいたこと、目で追っているうちに好きになってしまったこと、マッチングアプリに登録したことを知って私に会うために三社へ登録して捜しまくったことなどなど……。
　驚いた、腰が抜けそうだ。

「……ごめん。どう考えても俺はストーカーだ。初めて会った日に言うべきだった。今日は、機種代を持ってきたんだ。渡すね」

　彼は立ち上がって、黒のNORTH FACEのリュックから白い封筒を出して私の手に握らせた。厚みのある封筒によそよそしさを感じ、身体が急速に冷えていく。私に近づいた目的は弁償することで、明日から他人になりましょうってこと？

「い、いやいや、ちょっと待って。お金は受け取れないし、ストーカーだなんて思ってないよ」
「……えっ？」　

　彼は驚いて顔を上げる。鳩が豆鉄砲を食ったような顔だ。