31人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かに、最初は疑ったよ。だってこんなカッコいい子が私に興味持つなんておかしいと思った。でも今話を聴いてすごく驚いたけど、嬉しかった。私を見ていてくれた人がいたんだなって。それが健史くんだったなんて、光栄だよ」
喜んでくれるかと思いきや、彼の顔は晴れなかった。浴衣の生地を両手で掴みながら絞り出すように話す。
「……今日ここへ仁美ちゃんを連れてきたのは、逃げられないようにする為だよ。街中に泊まれば、本当のことを言った後、俺を嫌いになって飲みに行ってしまうかもしれない。俺のマンションなら自宅に帰ってしまうかもしれない。それも計算済みなんだ。セコい男だよ。本当にごめん……」
胸がぎゅうっと締付けられる。
そんなに自分を責めなくていいのに。
彼は誠実ゆえ、苦しんだのだ。そう思うと、今この瞬間も好きという気持が増幅されていく。
最初のコメントを投稿しよう!