大好きな騎士団長様が見ているのは、婚約者の私ではなく姉のようです。

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「魔法塔もむやみやたらに個々人の所有権にするつもりはありません──が、所有者に対してこの国は対価を支払ってきていない。そしてオレーリアを貶める言葉や噂の数々。僕がこの国に留学に来たのは本当ですが、もう一つ魔法塔から監査役としても来ていたのですよ。だから言い逃れはしないほうが良いかと。利用料が嵩みますからね」  国王と王妃はそれぞれ顔が青くなったり、赤くなったりと忙しいようだ。そんな中、王の間に乱入してきたのは帝国から出戻った王女クラリッサだった。よくこの場に顔を出せたものだ。 「お母様、お父様、アシュトンの姿が見えませんわ。先日のパーティーでも姿を見なくて……何かご存じですか?」  わぁお。客人がいても自分優先か。相変わらずとんでもない世間知らずなお姫様だ。そんなんだから兄様とソリが合わなくて離縁を突きつけられたのだよな。なぜかこの国では兄様が死んだことになっているし、情報規制が徹底しているというかなんというか。  白い結婚?  浮気三昧で豪遊していたくせに。今度はオレーリアの婚約者にまで手を出そうとするのだから質が悪い。王妃の言われるままに動く頭空っぽの人形姫だって自覚がないのは、憐れだな。まあ、どう転んでもあの婚約者はずっと前からオレーリア一途で、魔法塔にも籍を置いていたから心配はしていなかったけれど。  今頃二人で空中都市を見て回っているだろう。うん、同僚となる僕としても最高の結末だな。もっともこの国の者たちはこの先、国としていつまで維持できるか見物だ。  僕としては魔法術式の永久凍結でも良かったのだけれど、オレーリアは甘いからな。署名のサインを確認した後、師匠は転移門を召喚する。  転移魔法で帰るのも良いけれど、魔法塔の凄さを見せるためらしい。パフォーマンスも大事なことだ。 「ああ、それとこの魔法術式を使う場合、必ず誰に所有権があるか国が公表しないといけない。契約書にも記載してあった通りだ。三日で国中に通達しなければ罰則となるので注意してくれ」 「は!?」 「そんなこと一言も……」 「口にはしていないが、契約書をよく読めば分かるだろう。本当に同じ人間なのかと疑うほど頭が悪い王だな。このままではもって八年といったところか」
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