大好きな騎士団長様が見ているのは、婚約者の私ではなく姉のようです。

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 翌日のお茶会はキャンセルして、部屋の荷物をまとめる。もちろん魔法塔への移住の書類も朝イチで提出済だ。あと一週間は自分の離宮から出ずに、魔導書の翻訳や研究に時間を当てて過ごした。  私に会いに来る奇特な人間は、ウォルト殿下ぐらいだ。けれど今回は断り、「一週間後に」と手紙を書いたら、それで全てを察したようだった。  *** 「オレーリア! どうして帰ってきたのに、一度も会ってくれないの!? 出迎えの時もいなかったし!」  明日、姉の帰国を祝うパーティーに不参加の知らせを送ったら、姉が部屋に乗り込んできた。侍女も王女相手では追い返せなかったのだろう。いや、むしろスキャンダルにならないか、喜んで迎え入れた可能性だってある。 「現王妃と宰相閣下から会うなと、通達があったからですよ」 「まあ! 姉妹の再会なのに、お母様は一体何を考えているのかしら!」  私としては姉も何を考えているのか、サッパリわからない。 「それで、ご用件は?」 「明日のパーティーに出て欲しいの! それで私からオレーリアと仲良しだって話すわ。お母様が何か言ってきても私が守るもの」 「お断りしますわ」 「え」 「明日は大事な用がありますから、貴女のパーティーには出ません」 「酷いわ。三年の間に何があったの? 嫁ぐ前は、あんなに一緒にいたのに……」  ぐすんと涙する姉に心底、心が冷え冷えとしたものに変わっていく。どうせ私をパーティーに呼びたいのは、アシュトン様と婚約破棄を一方的にさせて自分が婚約する宣言をするためでしょうに。 「一緒に? 私と婚約者様とのお茶会に乱入してきたことですか? それとも市井のデートに勝手についてきたことですか?」 「あれは違うのよ! 私はオレーリアのために」 「私のために明日のパーティーで、私の婚約者を自分の婚約者にする気ですか? 明日が私の誕生日だと知っていて、よくそんな悪魔のようなことを思いつきましたね」 「酷いわっ……そんなこと……。お母様がそのほうが良いっていうから……違うの?」 「当たり前でしょう」  姉は真っ青になって黙った。何にショックを受けたのか知らないけれど、そんなこともどうでもいい。血縁の情などとっくの昔に消え失せているのだから。オレーリアが苦しんだ対価だけはしっかり取り立てさせて貰うわ。  ***  翌日、私の十八歳の誕生日。
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