大好きな騎士団長様が見ているのは、婚約者の私ではなく姉のようです。

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 私にそんな能力も魅力もないのですが……。そう言ってもダメそう。天使フィルターが掛かっているのか、あるいは今まで言動を制限されていた反動か。アシュトン様が上機嫌で、蕩けるような笑みを私に向けた。  耐性がないので、キュン死しそう。ずるい!  私だけドキドキするのは、なんだかずるいですわ! 「あの……首飾り。ありがとうございました! あの首飾り(ネックレス)を見て薄らとお母様のことを思い出せるようになったのです……!」 「それは良かった……。オレーリア様に何か返すことができて嬉しいです」  後光が射すほど眩い笑顔に、クリーンヒットしてこっちのHPはすでにゼロに近い。やっぱりアシュトン様は素敵すぎる! ああ、私ってなんて単純なのかしら。 「アシュトン様。もうこんな無茶はしませんよね?」 「オレーリア様のためなら、今後も無茶をしてしまうかもしれません……。お傍に居させていただけなくとも、私の剣と命は貴女様のために」  騎士として完璧な答えだけれど、私が求めるのは違う。ようやくアシュトン様に聞く勇気が持てた。それは先ほどまで愛を囁いてくれたから。 「そ、それは……騎士としてだけ? その……私のことを婚約者として……す、好いてくれているから?」 「騎士として貴女様をお守りしたい。そして婚約者として……いえ、一人の男として、オレーリア様を……ずっと前からお慕いしております。貴女様が覚えていなくとも、一緒に結婚ごっこをして、黒猫のぬいぐるみと夫の座を巡ってくだらない嫉妬心を燃やしたこと、強くなってオレーリア様をお守りしようと思ったのも、本当です。もし叶うのなら、今すぐにでも結婚を前提とした恋人として、抱きしめてキスをしたいです!」 「──っ!」  赤裸々すぎる告白に、自分の頬に熱が集まる。ああ、こんなに情熱的な方だったなんて! わなわなと震えていると、私が困っていると思ったのかアシュトン様はシュンと悲しげに微笑んだ。その顔を見た瞬間、胸がキュンとしてしまった。やっぱりアシュトン様は卑怯だわ。 「わ、私だってアシュトン様が大好きなのです。ずっとずっと好きで、姉に笑顔を向けている時は胸が潰れそうになるぐらい好きです! 全部を捨てて、空中都市で一緒に暮らしてほしいと思うぐらい大好きです」 「オレーリア様! ……その、触れても?」
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