大好きな騎士団長様が見ているのは、婚約者の私ではなく姉のようです。

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 なんの価値もないと思っていた末姫がこの国にとって、もっとも価値のある人間だったと今さら知った顔は傑作だった。魔法使いを守ることこそが魔法塔の存在意義であり、それこそが世界をよりよい道に進めるための《調停者》としての役割でもある。  それを王族が知らないはずがないだろうに。それでもオレーリアの功績ではないと思いたかったのか、誤魔化せるとでも思ったのか。  師匠は基本感情を表に出さない。だが今回はオレーリアのことで珍しく怒っていた。下手すれば国丸ごと焦土にする気満々の武装だったので、兄弟子からお目付役として同行を命じられた。  師匠もオレーリアと似た灰褐色の髪、陶器のような真っ白な肌、緋色の瞳の美女だ。黒のドレスにローブ姿で、いつもながら美しい。怒っている姿も凜としていい。 「魔法使いは世界の宝。それを貶めた罪は重い。魔法使いは貴重であり、国に富と繁栄をもたらすのをお前たちは知らないのか?」 「そ、それは……。しかしオレーリアが他の者の功績を盗んだと報告があったからで」 「だから? 再三、魔法塔で結論を伝えてきたはずだが? 貴公らは文字が読めないのか?」 「なっ……」 「はぁ。どうして、こんなことに……。オレーリアを虐げていれば全て上手くいくと、そなたが言っていたのは嘘だったのか」 「陛下……っ、あの女の娘は虐げられ、誰からも疎まれ、愛されない存在でなければならないのですわ。ああ……惚れ薬を使ってあの騎士から婚約破棄されて、惨めな思いをさせるつもりが……どうしてこうなったの!?」  うわあ。王妃も屑だが、実の娘なのにとんでもないことをいう父親だな。王としても父としても最低すぎる。これ以上会話を続けていたら師匠が王の間を消し炭にしそうなので、しゃしゃりでることにした。 「オレーリアがこの国に貢献したことで、この国の魔法術式の八割はこれより一時間後にストップします。もし今後もご利用するのなら、正規値段で利用料を払って頂くことになりますが、どうなさいますか?」 「この国で育ったからこそ生み出された魔法術式を、個人が所有するなど」
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