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聞いていないと騒ぎ立てるが、そんなのは事前に書類も渡していたのに、しっかりと内容を読まなかった王族が悪い。本当にこの国は大丈夫なのだろうか。まあ、王太子はまともだったし、国王王妃の尻拭いに奔走して各地を走り回っているとか。そんな暇があるなら妹を守ってやれよと思ったが、大分溜飲が下がったし僕が出る幕はない。
あのいけ好かない魔術師はオレーリアの婚約者が潰してしまったし、本当に出番がなくてかなしいな。……涙ぐんだら師匠が頭を撫でてくれないかな? 昔はよく撫でてくれたのになぁ。
はあ、誰か不敬なことを言って騒いでくれたら、少しは憂さ晴らしができるのに。まあ、どちらにしてもこのままだと帝国に滅ぼされるか、自滅だからいいか。これからはオレーリアに未解読な写本とかも読み解いて貰えるなんて、あーワクワクしてきた! 本当にこの国がクズで良かった。
***
数日後の空中都市。
王国での公式発表に目を通しながら、アシュトン様は怖い顔をしていた。私は気付かないふりをして美味しそうなオレンジタルトを頬張る。美味しい。ここのカフェも当たりだわ!
今はアシュトン様と今までできなかったことをしようとなって、カフェ巡りデートを楽しんでいる。普段着のアシュトン様も凜として素敵だわ。
ルンルン気分だったのだが、アシュトン様は新聞をテーブルに置くと珈琲カップに口を付けた。眉間に皺が寄っている。
思ったよりも怒っているようね。私の功績だと言いつつも、悪意のある書き方をしているので魔法塔から注意勧告がいくだろう。私としては毎月の利用料+超過料金も振り込まれるのでホクホクだけれど。傍にいない人に何をいわれても別に気にしないし、どうでもいい。
「オレーリア様。毎月の利用料だけとは、あの国への報復は甘くありませんか? 使用不可にして……なんなら今からでも巨大魔法を使って王城を落としてきますよ?」
「物騒すぎますわ! 絶対にダメです。私を侮辱して嘲笑った方々も、毎月城一つ買えるぐらいの利用料を払っていかなければならないのですよ。勝手に自滅していくので、このぐらいでいいのです。アシュトン様が大事な物は全部掬い上げてくださいましたし」
「しかし……」
「アシュトン様の気がすまないというのなら、近くに可愛いぬいぐるみ専門店があるのです。そこで抱き枕を買って……アシュトン様?」
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