証拠隠滅

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 おばちゃんは、朝の日課にしているウォーキングの道中で、本を拾った。  本が落ちていたのは、交通量が少ない道路の道端で、カバーは外されていたが、真新しかったので手に取ったのだ。  タイトルは【証拠隠滅】  テレビドラマにもなったベストセラーのミステリーだ。  オバチャンは、読んでみたいなぁ~、と思い持ち帰ることにした。    けれども、歩きながら表紙、見返し、扉と捲っていくと、僅かだが1ページ目が変色しているような気がした。    そして、いつも通りに、細い生活道路に入り、土建屋さんの土場の前を通りながら、今度は天、小口、地と回して見ていく。  土建屋さんは、法律や条令で禁止されているにも係わらず、毎朝、ドラム缶でゴミを燃やしているので、辺りは煙臭い。 「嫌だ!横から見ると、凄ごく汚い。お醤油かしら……」  オバチャンは、汚れに気が付いた途端に、持っているのも嫌になる。    そして、少しだけ引き返すと、顔見知りの土建屋さんに許可をもらって、その本をドラム缶に放り投げて燃やした。  いつもと変らない、平和な朝だった。  
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