第四夜

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目が覚めた時、美和は一人だった。 暗い部屋の中で、隣に寝ていた気配は感じた。 体を起こして部屋を見まわしてみたが、姿はない。 家の中にはいると感じて、 呼びかけてみようと思うけど、声が出せない。 ばたん、とドアの閉まる音がした。 急いで玄関に向かって、ドアを開けた。 階段を降りていく音がして、後を追って駆け下りた。 街灯の灯ったアパートの外の道を行く柴田の後ろ姿を見つけた。 駆け出そうとするのに、足が前に出せなくて、その場でしゃがみこんでしまう。 声も出ない。 振り向いて気付いて、と願うのも空しく、美和の存在にまったく気付かずに柴田はどんどん歩いて行ってしまう。 暗がりに遠ざかる背中が見えていても、どうすることもできない。 絶望した。 もう会えない。 もう私には誰もいない。 手を離したくなかったのに。 すべてを失った、と思った。
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