第五夜

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第五夜

待ち合わせって、ちょっと新鮮かも。 美和はあらためて自分の靴と服を見下ろしてチェックする。 白地に紺のラインがアクセントのラウンドトゥに、白のプリーツスカート。 ベビーピンクのニット。紺色の小ぶりのバッグ。 それと、彼からプレゼントしてもらったダイヤのネックレス。 変じゃないよね? ショーウィンドウに映る全身の姿も、チラッと見て、チェックする。 美和がよくやりとりをする取引先の人から映画の試写会のチケットを2枚、もらった。 柴田はその日、外出先から向かうことができるというので、直接会場の入口で待ち合わせることにした。 それにしても、なんでこんなに緊張してるんだろう。 と自らの心境を不思議に思う一方で、理由もなんとなくわかっている。 今、社内では、柴田祐太と伊東里紗が付き合っているという噂が広まり、里紗が認めたという尾鰭も付いて、そのまま公認のカップルのような扱いになっていた。 今のところ美和と柴田の関係に気付いているのはおそらく里紗と同じ営業部の大野依子だけだ。もちろん美和もそうだが、依子もそうした噂話にわざわざ介入するような女性ではないので、訂正されることもなく、そのままになっている。 自分と里紗を並べて考える時、どちらが自然に釣り合って見えるかといえば、伊東さんだよね。と思う。 柴田より1つ下の里紗が彼の横にいるのは自然でも、6つ上の自分が柴田と並ぶのは姉弟にしか見えないのではないだろうか。 二人で話す時に年の差を考えることはほぼないのだが、どうしても、自分たちは人からどう見えるのだろう、と意識してしまう。
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