第五夜

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上映が終わった後、近くのダイニングバーで食事をとることにした。 柴田は生ビール、美和はモヒートで乾杯した。 「美和さんの顔見てたら楽しかった」 柴田が枝豆をつまみながら、映画のストーリーとまったく関係のない感想を言い出した。 「思ってることが顔に出るから、いろんな顔して見てるのがかわいくて。映画の字幕追いながら美和さんの顔見てたから、ちょっと忙しかった」 「何それー。マスクしておいたらよかった……」 予想外の話を聞いて、美和は目を丸くして、顔を赤らめた。 もしかしたら、恋愛映画は男性には興味がなかったかもしれない、とも思う。 アクションとか冒険ものの方が好みだったかもしれない。 内容に関わらず誘ったら喜んで頷いてくれたのは、純粋にうれしい。 「今日は付き合ってくれてありがと」 「こちらこそ、誘ってくれてありがとう、美和さん」 柴田はピザカッターでピザを切り分けながら、楽しそうに言う。 「まだ一緒にやったことないこと、何があるかな。何かやってみたいことある?」 「なんだろう。今からだと、冬? 何があるかな」 「クリスマスとか、正月とか? スキーとかスノボ?」 「あ、寒いところは旅行してみたいかも。雪降ってるところとか」 「北海道! どこがいいかリサーチしよ」 こんなふうに、この先一緒にやってみたいことを考えるのは楽しい。 一年がそんなふうに続いて、また次の季節がやってくる。 そう想像すると、楽しみになる。
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