第二夜

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第二夜

友人に紹介したい、と柴田に誘われて、一緒に待ち合わせの店に向かう。 美和が彼の友人に会うのは初めてだ。 「どんな人かな? 緊張するなー」 「いつもどおりでいいよ。そんなに気を使う相手じゃないから」 そわそわと落ち着かない様子の美和に、柴田は笑ってぽんと軽く肩をたたいた。 「力抜いて。落ち着いて」 「はーい」 「あ、いたいた。嘉人」 声をかけると、黒いTシャツを着た男性がこちらを見て片手を上げて答えた。 テーブルまで行くと、嘉人は立ち上がって二人を迎えた。 「美和さん、田中嘉人」 「はじめまして。北島美和です」 柴田に紹介され、美和は名前を言って、軽く頭を下げた。 「どうも」 嘉人は美和の目を見ず、ぼそっとぶっきらぼうに言って、頭を下げる。 柴田がジャケットをハンガーにかけて壁のフックにひっかけながら笑った。 「緊張してんの?」 嘉人は柴田を軽くにらんで、先に腰を下ろした。 「するだろ? おれは人見知りなの」 「人見知りなんて初耳だけど」 柴田がくっくっと笑いながら、美和に奥の椅子に座るように促し、自分は手前の椅子に腰かけた。 「美和さん、何飲む? 嘉人は生だよね?」 「あ、じゃあ私も生で」 「OK。すみませーん、生ビール3つ!」 柴田が振り返って通りがかった店員に飲み物を注文した。
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