05.

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05.

「最後の大会にミフユとダブルスで出ることが、私の目標だった」  ミフユに追い詰められ、私はついに本音をぶつけてしまった。言葉を口に出すと、ミフユの表情が驚きに変わる。そうだ、こんなことは初めて言うのだから当たり前だ。  言い始めたら止まらなくなった。中学時代に抱えていた思いが次々と溢れ出し、気づけば涙で視界が滲んでいた。声がかすれて、ミフユがどんな表情をしているのかも分からない。でも、もうそんなことはどうでもよかった。私の感情は爆発し、怒りが全てを支配していた。 「なのにミフユは勝手に辞めた……。結局最後の大会も負けた。ボロ負けだった。どんなに努力しても勝てなかった私に、『なんでバドミントン辞めたのさ』なんて聞かないでよ!」  自分でも驚くほど、全てを吐き出した後、胸の奥にあった痛みが怒りに変わっていくのを感じた。心の中で何かが激しく叫んでいる。 しばらくの沈黙の後、ミフユが小さくつぶやいた。「そんなの……自分勝手だよ」  その言葉は私の心に重く響いた。何を言っているのか分からなかった。「自分勝手?」と、頭の中でその言葉を反芻する。ミフユの目が私を鋭く見据えていた。 「都合のいいことばかり言って。チナツだって私の苦しみをなんにもわかってない!」  突然、ミフユの言葉が私を突き刺した。「都合のいいこと?」と混乱しながらも、私の頭はそれを理解しようとするが、たださらに困惑するだけだった。 「大嫌いだ!」  ミフユはそう叫び、私の前から去って行った。  私の中で何かが崩れたような感覚がした。ミフユが私を嫌っているということが、突然現実のものとして私に押し寄せた。すぐに思い浮かぶべきことが、今まで見過ごされていた事実として目の前に立ちはだかった。  数日後、再びミフユの姿を見かけたとき、彼女は私と同じ「籠球部」と書かれたジャージを着ていた。隣にはコハルさんがいて、ミフユがバスケ部に入ったことを知った。
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