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15.
「チナツ!」
懐かしい声が耳に届き、振り返るとチアキさんがそこに立っていた。表情は少し大人びて見え、その隣にはミフユの先輩であるコハルさんがいた。二人は一緒にここに来たようだった。
「お久しぶりです!」と、私は笑顔で答える。しかし、心の中には少し緊張が走る。
「お久しぶりって言うほどでもないでしょ?」
「いやいや、前に来てくれたのはもう2ヶ月も前じゃないですか。」
二人は同じ大学に進学し、今もバスケを続けている。時々私たちを訪れてくれるが、二人の練習は私たちにとってはしごきそのものだ。
「あの、なんていうか、距離が近すぎませんか?」私はずっと気になっていたことを口にした。試合前の高揚感が、私の口を軽くしたのだ。
「そう?」とチアキさんが不思議そうに返す。
「普通じゃない?」とコハルさんも同調する。
二人の間には、何か特別な絆があることがわかる。そして、その関係が羨ましかった。心を許せる友達がいなかった私は、そのような関係に飢えていたのだ。そしてもし、それが可能なら、私はそれをミフユと築きたいと強く思った。
「今日の試合、楽しみにしてるね。」とチアキさんが声をかける。
「こら、あんまりプレッシャー与えないの。」とコハルさんが軽く注意する。
「こんなの、なんてことないでしょ。ね、チナツ?」
「はい! お二人の試合以上に熱戦にします!」
去年の二人の試合は本当に心に残るものだった。その試合を思い出すと、自然と自分もそのようにプレーしたいという意欲が湧いてくる。そして、ミフユと仲直りすることを目指している気持ちがさらに強くなった。
私は準備を整え、心も体も万全の状態で試合に臨む覚悟を決めた。
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